当時の送り出しや桁の横移動工事は台車で桁を搭載し、その状態で台者をロングストロークの油圧ジャッキにて押、引きする。軌条は鉄道レールを使用した。レールクランプ装置は鐡道レールを把持して桁の水平移動用固定装置とし開発された。
当時の鉄道レールは37kg/m、50kg/mレールが主流で有り、下部に装着するチャック装置の形状寸法を変える事で寸法が変化してもレールを把持可能とした。現在では40N、50Nレール等も把持可能としている。
初期型スライドジャッキは滑り架台の上に油圧ジャッキを搭載した形であった。スライド部にはテフロン板を設置して摩擦係数の低減を図った。本装置は台湾の「関渡大橋」の架設に使用された。
関越自動車道・沼尾川橋梁において送り出し装置4号機425TONタイプを製作して送り出し工事に使用された。沼尾川橋梁はハイピア(写真参照)構造であり、水平力は極力低い事が条件となった。そこで送り出し装置が採用されたが、従来の311TONタイプでは能力不足との事で425TONタイプを製作した。
東北新幹線・王子高架橋桁送り出しにて送り出し装置4号機600TONタイプを製作して送り出し工事に使用された。積載重量が当初製作した物から約2倍になっても浮上機構を取り入れる事で僅かな水平力で送り出しを行う事ができた。
北海道の大道公園の直下を通る札幌地下鉄東豊線大道り駅のアンダーピニング工事に於いて、24連式ポンプユニットと操作盤を開発し、コンピューターと連動して変位と荷重を常時計測、自動調整を行う事を可能とした。当社としては初めて受注した工事であり、その後のアンダーピニングに繋がる工事であった。
【驚き..マボロシー】ジャッキ仮受架台を溶接機により製作していたところ、油圧ホースが溶接機のアース線の代わりとなり電気が流れ、油圧ホース外周部のウレタンが溶けてしまった不具合があった。油圧ホースはカプラがジャッキに繋がり、ホースの内部にはワイヤーブレードが何層にも編み込まれているのでアース線の代わりになってしった事が原因であった。
キャタピラしこ送り装置の初期型を開発して「千住新橋」で使用した。初期型のスライド部はローラー(丸棒)の両側をチェーンで結びその上にクローラープレートを回し結び送り出しを行う装置であった。本装置の特徴はスライド部にローラーを使用する事で、摩擦係数が非常に低く抑える事ができた。現在のシンクロジャッキはスライド部にテフロン板を使用しているが、この年代に現在のシンクロジャッキの原型が存在した事は、当時の経営者に先見の明があったのであろう。
本州と四国を結ぶ連絡橋であり、当社は「北備讃瀬戸大橋」のハンガー引込みを受注した。橋の形状は「吊り橋」であり、当社では初めての工事のため、ハンガー引込み装置は新たに開発して施工した。構造は上梁と下梁の間に8500(KN)500mmストロークのジャッキを設置、四隅にテンションロットをハンガーソケットと連結し、反力ナット、盛替えナットにてハンガーを引き込む構造である。また忘れてはいけない事は油圧回転ナットの開発である。油圧回転ナットはベーンポンプの構造を利用して油圧の力でナットを回転させることで巻き下げ、巻き上げを可能とした。油圧ホースも始めて4色のカラーホースを使用する事で使用する機器の行先が一目で理解できる装置とした。
初期型スライドジャッキは1台で2000、3000(KN)の能力であった。構造は浮上機構を利用して、スライド部分に油圧の代わりにテフロン板を設置した。浮上機構によりスライドジャッキ積載荷重の90%をテフロン板に、残りの10%をシリンダー部分に荷重配分する事で、摩擦係数はμ=0.04程度となり、少ない水平力で重量物の移動を可能とした。後にペンケ水路橋の横移動にも使用する事になった。